大判例

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仙台高等裁判所 事件番号不詳〔2〕 判決

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役十月に処する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

弁護人小山内績の控訴趣意は別紙書面記載の通りである。

その第一点について。

刑法第二〇七条はその法文の示す通り二人以上の者が共同的行為にあらずして各別に暴行を加え、他人を傷害し、しかもその傷害の軽重又は傷害を生ぜしめた者を知ることが出来ない場合に適用される規定である。従つて同条違反罪の事実認定には共謀者にあらざる数人が暴行を加えたる事実とその結果たる傷害の事実とを判示するは勿論各人の加えた傷害の軽重を知ることが出来ない場合であるか、又はその傷害を生ぜしめた者を知ることが出来ない場合であるかの点をも明示しなければならない。しかるに、原判決を見るに、原審は本件を刑法第二〇七条に問擬しながらその事実摘示において、被告人は判示日時判示路上で須〓忠雄と遭遇し同人が被告人に文句をつけ突然被告人の頭を数回殴打するや被告人と同行した木村忠が所携の棍棒を取り上げて須〓の頭部を殴打し、次で被告人は木村からその棍棒を受け取り自らも須〓の頭部を数回殴打し、被告人及び木村両名の暴行に因り、須〓は判示の如き傷害を被つたものであると判示したに止まり、右の傷害が両名中何人の暴行に基因するものであるか、又はその軽重を知ることが出来ないものであるか否かの点を判示していないことが明らかである。果して然らば原判決は理由不備の違法があり破棄を免れない。論旨は理由がある。

よつて爾余の論旨に対する判断を省略し刑事訴訟法第三九七条に則り原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書に従つて当裁判所において更に判決するに、

被告人は昭和二四年九月一一日午前零時三〇分頃予ねて知合の間柄である木村忠(当時一七年)と共に酒気を帶びて靑森市浦町字野脇国道通り靑森市交通部車庫前道路に差しかかつた際、偶々同所で前方から酩酊して通りかかつた須〓忠雄(当時一九年)と遭遇し、同人が被告人に文句をつけ突然手拳で被告人の頬をつづけざまに数回殴打するや、木村忠は被告人に加勢して同所路上から長さ二尺二寸五分直径一寸七分の棍棒(証第一号)を拾い上げ右須〓忠雄の頭部を数回殴打し、同人のひるむ隙に被告人も木村忠から該棍棒を受け取り右須〓忠雄の頭部目蒐けて数回殴打し、因つて同人に対し左頭頂部に二ケ月間の安静加療を要する頭蓋不全骨折の傷害を負わせたのであるが、右は被告人及び木村の両名何人の暴行に基因するものであるかを知ることの出来ないものであつて、

以上の事実は

一、原審第一回及び同第三回公判調書中の被告人の各供述記載(但し各調書中被告人は須〓の頭を殴らないとの供述部分を除く)

一、原審第二回公判調書中証人木村忠の供述記載(但し同調書中被告人が出て来て須〓を二三回殴つてから自分がまたその棍棒を被告人から取つて二三回須〓の頭を殴つた時同人がのびたとの証言部分並びに検察庁での取調べの際被告人が殴つている中に相手が倒れたと述べたのは違つている。相手の男が倒れたのは自分が殴つたからだと思う旨の証言部分を除く)

一、検察官に対する被告人の供述調書。

一、検察官に対する木村忠の供述調書。

一、原審第三回公判調書中証人新渡戸泰の供述記載。

一、須〓忠雄に対する医師新渡戸泰作成の診断書(但し同書中忠男とあるのは忠雄の誤記と認める)。

一、押収に係る棍棒一本(証第一号)の存在。

を綜合して之を認め得るからその証明十分である。

被告人の所為を法律に照すと刑法第二〇四条第二〇七条罰金等臨時措置法第二条第三条に該当するから所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期範囲内で被告人を懲役一〇月に処し、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項に依りその全部について被告人の負担とする。

よつて主文のとおり判決する。(昭和二五年五月三〇日仙台高等裁判所第一刑事部)

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